通夜へ行く乗換ホーム鳥渡る   廣田 可升

通夜へ行く乗換ホーム鳥渡る   廣田 可升 『季のことば』  乗換の跨線橋通路を渡ったのだろうか。ホームの階段を下りて地下通路をくぐって夕空の見える乗換ホームに出たのだろうか。あまりなじみの無い駅をあちこちして、しかも通夜への道である。故人との付き合いのことなど、次から次へと浮かんで来て、ともすれば足元がおぼつかなくなったりもする。  「渡り鳥」には燕のように春から初夏にかけて日本にやって来て子育てし秋に帰って行く夏鳥と、秋に北方から避寒のためにやって来て春に帰る冬鳥がいるが、俳句の季語で「渡り鳥」「鳥渡る」と言う場合は秋にやって来るものを指す。ツグミ、ヒワなどの小鳥から鴨、雁、白鳥、鶴などの大きな鳥まで様々。いずれも群れをなしてやって来て大変賑やかなのだが、深まり行く秋とも相俟って焦燥感、寂寥感をも抱かせる。  乗り換え時に実際に鳥が渡っていたのかなどを詮索する必要はない。この季節感が大事なのだ。「通夜へ行く乗換ホーム」という上五中七と「鳥渡る」という季語が、絶妙に響き合い、なんとも言えない雰囲気を醸し出している。 (水 19.10.13.)

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