葡萄酒の赤の深さや秋の声    今泉 而云

葡萄酒の赤の深さや秋の声    今泉 而云 『季のことば』  秋の季語には「身に入む」、「色なき風」など感覚的で使い方が難しいものがある。「秋の声」もそのひとつで、明確な映像を持たないので、「帛を裂く琵琶の流れや秋の声 蕪村」のように、秋の声を感じる物や状況を句にすることになる。  掲句は葡萄酒の色で「秋の声」を表す。葡萄酒が声を発する訳はないので、赤ワインの濃い色に秋の気配の深まりを感じたということであろう。音の世界を色で表す発想・感覚が斬新で、迷わず一票を投じた。  句会では酒の種類をめぐってワイン談義となった。選者の大半は赤ワインをイメージしたが、色の薄いヌーボーを想像して採らなかった人、秋は白ワインだと譲らない人、果ては「秋は白(白秋)なので日本酒だ」という論も出て、酒好きの多いこの句会らしく笑いが溢れた。  ただ酒の色はともかく、赤ワインから秋の声を聴き取った作者の感性に共感した人は多く、この兼題の最高点を集めた。 (迷 19.09.26.)

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