秋風が運ぶ会話や老夫婦     深田 森太郎

秋風が運ぶ会話や老夫婦     深田 森太郎 『季のことば』  八月に猛威を振るった暑熱地獄も、ここに来て鎮静の兆しが見えてきた。吹く風にかすかに秋の気配が感じられる。幼児・老人・病人にとって待望久しい。「暑い暑い」と言うばかりだった老夫婦も生き返る時季が来た。自然、用事一辺倒だった夫婦の会話も話題が増えて弾んでくるというものだ。テレビニュースを観てお爺さんの蘊蓄やら友人知己の他愛無いうわさ話に花が咲くかもしれない。  もうひと踏ん張り暑夏をやり過ごしたら、外出・遠出の季節がやって来る。葡萄狩りや梨狩り・茸採りにも興じることが出来る(海の幸、秋刀魚の今年の極端な不漁は残念だが)。上野の美術展へ出かけようと算段しても無理はない。  掲句は老夫婦が楽し気に会話する情景がまなうらに浮かぶ。恋人や夫婦の間に秋風が吹くというネガティブの謂いがあるが、「秋風」には、精気横溢の真夏が終わる一抹の寂しさがありながら、幼・老・病の人が一息つける「よすが」となるものであろう。(葉)

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