顔の染又一つでき老いの夏     田中 白山

顔の染又一つでき老いの夏     田中 白山 『この一句』  顔に出来たシミ、作者が自分の顔を鏡で見たものか、と思った。後で伺うと、奥様のシミだと言うので、俄然「気になる句」になった。  私自身、自分の顔を鏡で見るのは剃刀を使う時だけである。仔細にシミを点検することはまずない。いわんや、かみさんのシミを覗きこむなど、考えたことも無い。しかし作者のお宅では、奥様の顔を点検なさるのだろうか。それとも見慣れないシミに気付くほど見つめ合う? そんな想像をしながら、句を眺めているうちに、見えてきたのは、作者ご夫婦が笑顔の絶えない和やかな雰囲気に包まれて日々、過ごされている、と言うことである。シミが話題になっても笑いの種にこそなれ、喧嘩の種にはならない。そんな明るい、しっとりした世界なんだろう、と感じ入った。  シミは活性酸素がメラニン色素を作りだし、それが沈着して色素班を生む。ひと口で言えば、老化である。老化現象が諍いの原因になったのでは、たまらない。やはり偕老同穴である。立秋を過ぎて夏の暑熱を振り返る時、目にとまったシミ。それを句にできる微笑ましい世界を見せて頂いた。(て)

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