来客の使ふ絵扇京の風     水口 弥生

来客の使ふ絵扇京の風     水口 弥生 『この一句』  俳句の作り方に、対象を詳述せず解釈を読者に委ねる手法がある。掲句でいえば、客が絵扇を使っていると描写するのみで、「京の風」をポンと添えているような詠み方だ。  句会では絵扇と京の風をどう読むか、いくつか意見が出た。「京都から来た客が絵扇を使っていて、それを京の風と表現した」という解釈のほか、「京都は古くから扇の主産地。絵扇を見て京都を思った」との見方もあった。  扇は、扇ぐ(あふぐ)から来た言葉で、風を起こす道具の一種。中国語の扇(せん)が団扇を指すのに対し、木や竹を束ねて一点で固定し、開閉できるようにした扇は往古、日本で創案されたものという。扇も団扇も夏の季語だが、家庭でくつろぐ団扇に対し、扇はよそ行きのイメージがある。傍題には扇子、白扇、絵扇、古扇が並ぶ。  掲句は扇を来客と組み合わせて、よそ行きの雰囲気を強め、さらに絵扇と京都のイメージを重ねている。単純そうに見えて実は奥行きのある句と言える。何やらはんなりとして芯の強い「京の風」を感じてきた。 (迷)

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