朝日さすオゾンの夏野越えにけり     後藤 尚弘

朝日さすオゾンの夏野越えにけり     後藤 尚弘 『この一句』  太陽が昇り始めた頃の広々とした野原を越えて行く。尾瀬や日光の戦場ヶ原などを思い浮かべれば良いだろう。阿蘇の草千里でも北海道富良野の広大な原野でもいい。何とも気持がいい句である。  ただし、この句は「越えにけり」とあるから、作者は夜明け前に宿を出て、明け初める野に踏み出し、朝日が高く昇った時間には夏野を越えてしまっていることになる。高みに立ち、今来た野原を見渡しているという情景である。珍しいタイミングを詠んでいる。  もう一つ、「オゾンの夏野」というのに気が惹かれる。オゾンというのはよく聞く言葉だが、実態はよく分からない。調べてみたら、強い紫外線や放電現象などにより、空気中の酸素が破壊されてO3という状態になったものだという。強烈な酸化力で殺菌、脱臭、脱色などの力を持ち、最近は食品の殺菌などに利用されているが、これ自体は人体に有害な物質なのだそうである。  ともあれ、昇る朝日の清清しい夏野を越え、「さあ、行くぞ」と次の目的地を目指す、そんな意気込みが伝わって来る。(水)

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