父が漕ぐボートが切り裂く花筏     中澤 豆乳

父が漕ぐボートが切り裂く花筏     中澤 豆乳 『おかめはちもく』  公園の池で父と息子がボートに乗っている。初め、子供に漕がせていたが、左右に揺れたり、スピードが出なかったりと不安定だ。後ろにいた父親が「代ろうか」と声を掛ける。子供は前に移り、父が漕ぎ手になった。ボートはスムーズに進み出し、前方の水面を見つめる息子の目が輝いてきた。  桜は早くも満開を過ぎて、花吹雪の頃。池の面に浮ぶ花びらはあちこちに固まり、花筏(はないかだ)を成している。そこへ父の漕ぐボートがぐんぐんと乗り込んでいく。花筏は二つに切り裂かれ・・・。「お父さん、凄いな」。息子はいつか超えていくべき、父のパワーを目の当たりにしている。  素晴らしい場面を詠んでいるが、掲句に存在する二個所の「が」に注文をつけたい。発音の場合、「が行の剥き出し型」を避け、鼻濁音を用いて柔らか味を出そうとする手法は、すでにご存じだろう。俳句も同様で、「が」の荒っぽさを避けるための工夫が存在している。一つは「が」を「の」に代えること。もう一つは「が」を省いてしまうことだ。掲句もその定跡に従おうではないか。(恂)  添削例   父の漕ぐボート切り裂く花筏

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