陣馬山遠く遠くに春ともし     野田 冷峰

陣馬山遠く遠くに春ともし     野田 冷峰 『この一句』  山好きの先生が遠くを指さして言った。「この先に景信山があり、その先に陣馬山がある」。小学生の頃、いま人気の高尾山に遠足で登った時のことだ。その陣馬山に高校時代、一度登った。近くの青年団の登山に誘われたのだが、楽な高尾山に比べて「これが本物の山なのかな」と思ったものだ。  高尾山からは遥かな新宿方面を初め、下界の民家などが見えていた。ところが陣馬山からの風景は、山また山の記憶しか残っていない。標高は八五五叩D耕遒篁獲釮涼羆犾ζ逎▲襯廛垢箸枠羈咾砲覆蕕覆い、高尾山よりかなり高く、人里からずっと遠いところという印象が残っている。  あの陣馬山で日が暮れたら、まさに掲句のような風景を目にすることだろう。「遠く遠くに」と重ねた表現が胸に応え、六十年以上も前の記憶が甦ってきた。この句会では井上庄一郎さんの「山峡に春燈ぽつり無人駅」が票を集めた。人は山に登って里を恋い、里に戻って山を恋うのである。(恂)

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