二千円あれば一日春の道     植村 博明

二千円あれば一日春の道     植村 博明 『この一句』  意表を突く句である。「二千円あれば」と謎をかけ、「一日」とぶっきらぼうに答えを投げ出したうえで、春の道に続ける。最後まで読んでやっと句意が掴める。すると情景が浮かび、思わずニヤリとする愉快な句である。  春の陽気に誘われて外出したのは、おそらく元気な年寄りであろう。気軽な服装で、草花を愛でながらの散歩だろうか。途中で冷たい飲み物を買い、いつもより足が延びる。お腹が減ったら蕎麦屋で何か食べる。ビールの一本も付けようか。歩き疲れたらバスに乗って帰ってもいい。二千円あれば春の一日を結構満喫できる。元気に老後を楽しむ昭和生まれの年金生活者の姿が浮かんで来る。  団塊の世代が75歳の後期高齢者入りし、年金財政はひっ迫の度合いを増すと言われる。平成生まれの若い世代は年金支給開始年齢がさらに引き上げられ、支給額も抑制されるのではないかと懸念している。  この句を採ったのは年金受給世代で、「理想的な暮し」と同感している。ただ若い世代は複雑な感慨を抱くかもしれない。20代、30代の感想を聞いてみたいものだ。(迷)

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