雛納め三人娘に会へぬまま     旙山 芳之

雛納め三人娘に会へぬまま    旙山 芳之 『この一句』  日経俳句会三月例会で最高9点を得た句である。娘が三人もいるので雛を飾り、誰かは帰ってくるかと待っていたのに誰も帰ってこなかった。「ウチも三人娘なのでこのまんま」「子どもたちが独立した後の老夫婦の寂しさが伝わってくる」など、自分の家庭を重ねて共感し、採った人が多かった。  雛納めという季語には祭りが終わった寂しさが内包されているように思うが、雛祭の時ぐらい帰ってきてほしいとの願いが届かず、寂しい思いで片付ける親の姿が浮かんできて一段と心に沁みる。  句会では「三人娘」という言い方が一般名詞みたいでちょっと苦しいので、「娘三人会えぬまま」としてはどうかとの意見も出たが、入会二ヵ月目の新人の作品と分かって、一座がどよめき感心しきりだった。  作者は新聞社の編集局を振り出しに、総務部門やテレビ局勤務も経験したベテラン。言葉に対する感性は若い時に整理部に在籍し、記事の見出しを付ける仕事で磨かれたようだ。入会時の句「残雪や苔あおあおと三千院」も注目されたが、今後の成長が楽しみだ。(迷)

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