春光や天使のはしご駆け下る      宇佐美 諭

春光や天使のはしご駆け下る      宇佐美 諭 『おかめはちもく』  雲の切れ間から地上に射し込む光の筋を「天使のはしご」とは。私はとても感心し、合評会で「うまい表現を思いついたものだ」と話した。すると作者の答えは「いや、そういう言葉が元々あるんですよ」とまことに正直なもの。周囲の「黙っていればいいのに」の声に笑いが起こった。  ごく普通に見ることがあり、誰もが「ああ、あれか」とうなずける自然現象である。旧約聖書にある言葉で、イスラエル民族の祖・ヤコブが夢の中で「天使たちの上り下りするはしご」を見たことに由来するだという。そう聞くと、急に有難味が増してきて、神々しい風景と思えてくる。  ただし「春光や」はどうだろうか。「や」で切れたのだとすると、誰が、何が「天使のはしご」を駆け下って来るのか。作者は「“春光の”かとも思ったが、言葉の調子が・・・」と言う。ならば春光の傍題「春の色」を使ったらどうか。いかにも春らしい色彩が雲の間から駆け下りてくるのだ。(恂)   添削例  「春の色天使のはしご駆け下る」

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