春浅し駅前花壇植栽中 向井 ゆり
春浅し駅前花壇植栽中 向井 ゆり
『季のことば』
この句の季語はもちろん「春浅し」で、二月から三月初めをうたっているのだが、その中身を駅前花壇の植栽作業としたところがいい。これによっていかにも「早春」の感じのする新鮮な句になった。
近ごろ、東京近辺だけでなく全国どこへ行っても駅前広場が綺麗になったことに驚く。日本の玄関である東京駅丸の内口も去年までは工事中だったり、いろいろな夾雑物があってゴチャゴチャしていたのがすっかり整備され、皇居前広場まで見通せるようになってすっきりした。私の住んでいる横浜も、横浜駅こそ相変わらずごたごたしているが、桜木町駅や関内駅は汚らしいばかりだったのが、花壇や植え込みなどが出来て見栄え良くなっている。日本経済は図体が大きくなるに従って動きが鈍くなり、景気停滞の印象が尾を引いているけれど、こうした"腹の足しにならない"ような所にも改善の手が伸びているのは、国力がついてきた証しとも言えよう。
花の種蒔く、球根を植える、苗植える等々は全て春の季語。「さあいよいよこれからだ」という気分がふくらんで来る。(水)