あら汁に寒の弱りを癒しけり 徳永 木葉
あら汁に寒の弱りを癒しけり 徳永 木葉
『この一句』
魚を三枚に下ろし、身を取った後に残った頭や骨の部分が「あら」である。鯛や鰤など大型の魚のアラは捨ててしまうのが勿体ないような気になる。それを野菜と一緒に汁物に仕立てたのが「あら汁」。大昔は料理人が自分たち用に作っていた、いわゆる「まかない料理」だったのが江戸末期一般に広まった。今ではデパートの地下食品売場でさえ、鯛や鰤のアラが売られるようになり、こまめな料理好きの主婦がせっせと拵えるようになった。
あら汁が美味く仕上がるかどうかは下ごしらえが物を言う。まずアラを流水でさっと洗い、塩をまぶして10分から15分ほど置く。それを鍋に湧かした熱湯に入れて3,40秒、霜降りになったのを冷水に取り、全体がばらばらにならぬよう優しく、付いているウロコや血合いを除く。これとあらかじめさっと下茹でしておいた銀杏切りの大根と人参を一緒に、酒を5勺ばかり入れた出汁を張った鍋に入れ、斜めに切った長ネギも入れて煮る。煮立ったら味噌を入れて出来上がり。味噌ではなく、生姜を少し入れた醤油仕立てでも良い。あら汁と熱燗で大概の風邪は雲散霧消する。(水)