用水の微かに流る根白草 高井 百子
用水の微かに流る根白草 高井 百子
『合評会から』(酔吟会)
而云 根白草、芹ですね。緩やかな流れの中に芹がひっそりと生えている感じがよく出ている。
水兎 美しい形の句だと思いました。水のきれいなところに住む人が羨ましいです。
水牛 早春の感じがよく出ていて、感心しました。芹は本当にけなげに生えてくるんですよ。
誰か 根白草が芹だとは知らなかった。
水牛 昔の俳句にはよく出てくるが、今はあまり使わない季語ですけれどね。
百子(作者) 淡々と詠みました(笑)。この時期、用水路の水は僅かですが、芹は伸び始めています。
* * *
芹は春の七草の一つ。田の畔や小さな流れの岸辺に生え、春の盛りになると、びっしりと辺りを埋め尽くすほどだ。秋田の郷土料理きりたんぽに欠かせないが、おひたしのほろ苦さが春の到来を知らせてくれる。
この時期、農業用水の水量は少なくなっている。句の水は流れているかどうかはっきりしないほどなのだろう。しかしよく目を凝らすと水はゆるゆるゆると動いているのが確認できる。おや、芹も少しずつではあるが、伸びてきたぞ・・・。農業地帯からもたらされた季節感である。都会にも春が近づいてきたぞ、と思う。(恂)