初夢やあの世この世を行き来して     片野 涸魚

初夢やあの世この世を行き来して     片野 涸魚 『合評会から』(酔吟会) 春陽子 夢など見たことがあまりありません。ましてや初夢など・・・うらやましいですなぁ。 光迷 うん、確かにうらやましい。「あの世」と「この世」を行ったり来たり。あの世ではきっとご両親と一緒なんでしょう。この世では孫たちに囲まれてね。いいなぁ、こんな夢見てみたいですね。 操 この句は、年代の行った方の句ではないかしら。なんだかドキッとさせられる句だと思います。           *       *       *  このコラムは毎年1月初めと2月初め、掲載句を集めるのに苦労する。年明け早々は新年詠を載せたいのだが暮れの句ばかり。2月初めは、とっくに正月のことなど忘れられているのに新年詠しか無いのだ。しょうがない、しばらくは開き直って新年の句を云々。この句は読みようによっては操さんの言うようにどきっとさせられる。句会最長老の作者は「いやいや、ただ酔っぱらって朦朧として見る夢です」と、まさに仙境。(水)

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松明けも株や為替は荒れ模様    竹居 照芳

松明けも株や為替は荒れ模様    竹居 照芳 『おかめはちもく』  株価は年末の大納会は手仕舞で下がり、年始の大発会は買い戻すから上がるというが、本年の株価や為替相場はそんな常識とはかなり違う動きだったらしい。言うまでもなく二大国・米中の確執で株も為替も不安定な情勢。欧州では英、仏の政情不安もあり、この先はなかなか見通せない。  掲句は年末年始の株価や為替を詠んで、経済は不安をはらんでいるのだ、と教えてくれる。われわれ一般人にも株や為替の相場は意外に身近なもので、知らないうちに何らかの影響が及んでいるに違いない。このような世界をまともに詠んだ例は少ないはずで、珍重すべき句と思われるが・・・。  俳句の構成に少々注文をつけさせて頂く。中七で「株や為替」を出すとその時点で結末が見えてしまう。一句を読み終えた時点での種明かし的効果を狙いたいところだ。「株と為替」を下五に下げてみたらどうだろう。俳句はたったの十七音。だからこそ隅々までの目配りが大切なのである。(恂)   『添削例』」 「松明けも荒れ模様なり株為替」

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