三囲の句碑のほとりや猫の恋 廣田 可升
三囲の句碑のほとりや猫の恋 廣田 可升
『おかめはちもく』
選句の際、「三囲」を「みかこい」と読む声が聞こえた。実は私もこの句を見た時、「?」と一瞬、考えたのだ。すぐに「みめぐり」と気付いたが、読みに少しでも滞りが起こるようでは句の作り方として好ましくない。作者が判明した時、名手の作にしては、ちょっと緩みがあるかな、と思った。
改めて句を見直す。「ほとり」があまり生きていないように思われた。代わりに「三囲神社」まで書けば、すんなりと読める人が多くなるだろうが、それでは芸がない。三囲神社は芭蕉の一番弟子・宝井其角の句碑があったはずだ。ネットで調べたら、「其角 雨ごいの句碑」を写真で確認出来た。
其角は当時、江戸一番の人気者だったという。干ばつの年、其角が三囲神社を詣でると、農民たちが集まってきて「雨乞いの句を」と懇願した。さればと其角は「夕立や田を見めぐりの神ならば」と詠んだ。「其角」の名を出せば「三囲神社」と気付き易いはず。なお其角の文に「翌日雨降る」とある。(恂)
添削句 「三囲の其角の句碑や猫の恋」