賀状読む友が周りに居る心地 澤井 二堂
賀状読む友が周りに居る心地 澤井 二堂
『季のことば』
八十歳になっていた一昨年の暮、私(筆者)はもう賀状を出すのは止めよう、と決めた。ところが元旦に賀状が到着すると、あの人、この人と顔が浮かび、返事を出さざるを得なくなった。そして昨年暮、どうしようか、と悩んだ末、悩むくらいなら出しちゃえ、三十枚ほどの賀状を書いた。
掲句を見て「そだねぇ」と呟いた。賀状を頂く人たちの多くは、生半可な付き合いではない。企業や団体などからのものは無視してよさそうだが、親友も心友も句会に入ってきたばかりの新友も、みな大切な人ばかりだ。賀状を机上に並べれば、まさにそこに友が居るような気持になる。
何年も前から、賀状をメールで送ったら随分楽になる、と考えていて、実際に試したことがあった。送るべきものは賀状の裏だけ、「謹賀新年」に挨拶の一行を添えていた。あのメール賀状を受け取った人は、私が周りに居るように思っただろうか。思うはずはないなぁ、と反省している。(恂)