小さき頃父と来た坂福詣り 池村実千代
小さき頃父と来た坂福詣り 池村実千代
『この一句』
日経俳句会、番町喜楽会の合同七福神詣吟行(一月五日)からの一句。東京・池上の本門寺を中心にした各寺を巡って一万歩余りを歩いた。本命の本門寺は周辺の商業地・住宅地から石段百段ほどを登った高台にある。周辺の寺院のいくつかを詣でた後、大本山の石段には一苦労の人も見受けられた。
作者は幼い頃、父上といっしょに池上の坂を上ったことがあった。その坂は本門寺の境内なのか、周辺の道路なのかは不明だが、「坂」の一文字によって、さまざまな景色が見えてくる。思い出の坂である。当たり前だが、傾斜のある道だ。幼い頃、寺を目指して坂を上っていったのだろうか。
この吟行に参加した人は「あの坂かな」などと思いを巡らせたに違いない。上り坂の先には空が見えただろうし、下りなら門前の商店街を通って行ったのかも知れない。お父さんと手をつないでいたのか。では、お母さんは? 読み手は自分に置き換え、いろんなことを考えてしまうのだ。(恂)