松明けぬ豆腐屋店をたたみしと 須藤 光迷
松明けぬ豆腐屋店をたたみしと 須藤 光迷
『合評会から』(酔吟会)
冷峰 豆腐は大量生産で安く売られている。手作りの豆腐は美味しくても値段がね。身に沁みますなぁ。
鷹洋 「お正月が終わった」と思ったら「豆腐屋さんは店じまい」なんですね。時代に乗れずに店じまいする悲しさが「松明けぬ」という言葉に集約されています。
百子 正月の松が取れて、普段の生活に戻る。近くのお豆腐屋さんの店に行ってみたら「閉店」の貼紙が・・・。お正月の間、「店じまい」のことはお得意さんには伏せていたのでしょう。
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我が家の近くに百値召蠅両ε抗垢かつてあった。入り口の電柱には今も「〇〇商盛会」の看板が残っているが、商店ゼロになってから久しい。最後まで残ったのは、もしかしたら豆腐屋さんだったかも知れない。
昭和年代あたりまでだったと思うが、大人も子供もそれぞれ店を「八百屋さん」「お米屋さん」などと呼んでいた。幼児が「パーヤマ(パーマ屋)さん」と呼ぶ店もあった。近くの人々にとって親戚に近く、掲句のお豆腐屋さんも同じのはずだ。「閉店」のお知らせを松明けまで待ったのは“親戚”への心遣いだったと思われる。(恂)