冬夕焼け娘のためのカレーかな      石黒賢一

冬夕焼け娘のためのカレーかな      石黒賢一 『おかめはちもく』  作者は自他ともに許す料理の名人。イタリア在住の頃に腕を磨いたパスタ料理が何より自慢だが、和食、洋食もなかなか美味しいとの評判だ。本業は引退し、悠々自適の毎日だから、キャリアウーマンの娘さんのために夕食に腕を振ることが多いらししい。この日はカレーライスに腕を振るっていたようである。  窓の外は夕焼けの空。娘さんの帰宅時間に合せて仕上げようとしているが、ついでに次週の句会のために一句を捻っていたようだ。そのために集中力が欠けたのだろうか、ちょっと注文を付けたい出来になってしまった。「冬夕焼け」で切れ、下五の「カレーかな」も「かな」で切れるので口調が悪くなっているのだ。  この句は、下五を「カレー煮る」とすれば、すべてがすっきりと収まるだろう。添削例はすなわち「冬夕焼け娘のためのカレー煮る」となる。この句会(三四郎句会)の勉強会では「二句一章」を勧めていたのだが、掲句の仕上がりは残念ながらイマイチ。カレーの出来は見事であったはずだが・・・。(恂)

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