ほんのりと甘き切り干し母の味 竹居 照芳
ほんのりと甘き切り干し母の味 竹居 照芳
『この一句』
大根の切干、料理の仕方は? と家内に聞いたら「母から習ったものだけれど」と次のように話してくれた。ボールに水、その中に切干を入れてもみ洗い、ゴミなどを落としたら水気を絞る。小鍋に入れてヒタヒタの水につけ数分。軽く絞って纏まったところを三つ、四つの適当な大きさに切る。
あとは油揚げとか、いま人気のサバ缶などとともに煮たり、サラダにしたり――、料理の種類は多いようだが、あとは省略。切干は子供の時から食べていたが、人生八十年にして、そのように作るのか、と初めて知った。切干の料理のような総菜類は、間違いなく母系によって引き継がれていく。
さほど美味いものではないが、年ごとに「ほんのりと甘い」切干料理が懐かしい。家内も作ってくれるが、なぜか母の味だと思ってしまう。掲句は、ごくあっさりと詠んでいるが、そこがいいのだろう。合評会では「賛同」の言葉が幾つか出て、作者は「そこまで考えて頂けるとは」と驚いていた。(恂)