老人の顔とはこれか冬帽子 今泉 而云
老人の顔とはこれか冬帽子 今泉 而云
『合評会から』(番町喜楽会)
命水 帽子を新調する時に鏡を見て、自分の顔に愕然とされたんでしょうね。
可升 はっとした瞬間。そうは思っても余り認めたくないし、句にしたくもないものですが、そのまま句にされた率直さがいいですね。
哲 防寒のための冬帽子はややダサいものが多いように思います。そんな冬帽子をかぶった自分の顔を詠んだこの句に、たいへんユーモアを感じました。
白山 冬帽子をかぶって若返ろうと思ったら、やっぱり年寄りであることは隠せない。なかなか面白い句です。
木葉 「これか」の措辞が効いています。冬帽子をかぶって鏡を見た瞬間の印象を「これか」で切り取ったところがいいですね。
てる夫 いやあ、つくづく嫌なことを詠んだ句だなあと思います(笑)。
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寒いチェコに赴任していた時に帽子が必需品になり、爾来半世紀近く帽子をかぶっている。四季折々のものをあれこれ30ばかり持っており、新しいのを被る時には鏡を見る。近ごろはまさにこの句の通りを実感する。(水)