秋天に鴟尾輝ける興福寺     久保田 操

秋天に鴟尾輝ける興福寺     久保田 操 『合評会から』(日経俳句会) 庄一郎 これはもうこの通り。興福寺が新しくなったのをテレビ映像から詠んだのだろうが、「鴟尾輝ける」が上手い。 十三妹 なんの衒いもない、しかも光景がはっきり分かる。秋の晴れやかな光景がいい。 三代 「秋天に輝く」なんてのは、普通は採らないのですが、ニュースで新しい鴟尾が輝いているのを見たら採らざるをえない。           *       *       *  10月7日に興福寺の伽藍の中心を為す中金堂の落慶法要が行われ、雄大荘厳な建物が300年ぶりに姿を現した。天平時代の代表的な伽藍建築だが、7回も火災で焼尽した。今回完成したのは享保時代に焼け落ちて以降300年も失われていたものを、天平時代の資料を基に忠実に復元したという。ただ、太く長い巨大な丸柱が国産材では均質なものが揃わず、カメルーン産になったというのが、いかにも時代を表している。落慶法要のテレビ中継は迫力があった。特に巨大な金色に輝く鴟尾が印象的だった。いいところをパッと詠んでいる。(水)

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