をちこちに杉の尖りや霧の海 今泉 而云
をちこちに杉の尖りや霧の海 今泉 而云
『合評会から』(日経俳句会)
双歩 霧の中に杉の先だけが見える光景をとても上手く詠んでいる。
三代 どこから見ているのかなと想像した。山の中腹なのかな。「杉の尖り」がうまい。
木葉 どこから見ていてもいい。霧から出ている杉の先端を「尖り」と言ったのがいい。
阿猿 墨絵のような光景が浮んで来た。
哲 いかにも静かな様子を描いているのがいいと思う。
反平 実景かも知れないし、想像句かも知れないが、視点が新鮮だ。
正市 峠辺りから周囲の山を見ての景か。立ち位置がよくわかる。
* * *
まさに水墨画の景色である。作者によれば、「岐阜の千光寺に円空の彫った両面宿儺(りょうめんすくな)を見に行って山の中腹から見た光景」だそうである。立ちこめた霧によって自らも仙界に置かれたような気分になる。(水)