風読みて芒並べる花屋かな     谷川 水馬

風読みて芒並べる花屋かな     谷川 水馬 『この一句』  面白い場面だなぁ、と嬉しくなった。花屋の店の奥に店員がいて、時々外を眺めていたのだろう。すると、例えば道行く人の軽いコートが靡いている。風が吹いてきたのだ。そうだ、と店員は気づく。店の中に活けてあった芒(すすき)をよいしょ、よいしょと運び出し、外に並べてみたのである。  今年の「中秋の名月」は九月二十四日だった。満月は翌日の二十五日だったそうだが、どちらが重要な日か、なんて考える必要はない。中秋の名月と中秋の満月。二日にわたって月見を楽しめるかも知れないし、花屋さんにとっては、芒の売れるチャンスが一日増えたことになるではないか。  とは言え二日間のこと。ボーッとしていたら、時季物の芒は売れ残ってしまう・・・と思っていたら風が吹いてきた。店員さんは「これだ」と気付き・・・。やや作り過ぎか、とは感じたが、これも俳句の面白さだ。道行く人も「風の中の芒」に気付いて買い求め、我が家の月見を楽しんだに違いない。(恂)

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