つれづれに眺むる庭や秋の声 吉田 正義
つれづれに眺むる庭や秋の声 吉田 正義
『合評会から』(三四郎句会)
諭 ゆったりと詠んで雰囲気がある。語調を含めて伝わってくるものが多い。
進 素直に詠んでいて、同感ですね。
尚弘 「つれづれなるままに」なのですね。秋が来たのだ、という感じが伝わってくる。
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まさにこの句は尚弘さんが言うように、「つれづれなるままに日暮し硯にむかひて心にうつるよしなしごとを・・」という兼好法師の身になって詠んだような句である。先人の名歌名句を踏まえ、それに唱和しながら自分の思いを述べる「本歌取り」という手法があるが、この句も一種の本歌取りと言えよう。
しかし、この句は単に言葉を借りたというのではなく、自分の「今」をそのまま詠んだところがいい。手入れを怠り何の風情も無い庭などろくに見る事も無かったのだが、何をするでもない夕方、何の気なしに目を遣った。雑草が花穂を伸ばし風に揺れている。もう既に種を飛ばしきってすがれているのもある。つくづくと、年を追うごとに時の過ぎるのが早くなっていくようだと思う。(水)