青蜜柑仏様には二個供え     石丸 雅博

青蜜柑仏様には二個供え     石丸 雅博 『この一句』  この句を見て「何で二個?」と思う人がけっこういるかも知れない。その人はたぶん、若い頃に実家を出て、自分の家庭を作った人やその家族だろう。親が亡くなっても、家に仏壇は作らないだろうから、“仏様”との付き合いは疎いはずだ。頂き物があっても、仏壇に供えるという心得がない。  親の家を継いだ人も、若いうちは“仏様”への関心は薄いはずだ。しかし祖父母が亡くなる頃になると、親を見習って仏壇に花や供物を供えるようになり、親が亡くなれば寺との関係も引き継ぐことになる。同時に仏壇へ線香を立て、リンを鳴らし、手を合わせるなど、朝のお勤めが身についていく。  親の故郷から青蜜柑が送られてきたらどうするか。すぐに箱から取り出し、まず「仏様へ」となる。二個にするのは亡き父母へ一つずつ、ということだ。跡継ぎの夫婦が青蜜柑を供え、懐かしい香りを仏様に届けるのである。「ジジとババが、けんかしないようにね」と、子供たちに話したりする。(恂)

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