異国語も秋の声なり京の寺 河村 有弘
異国語も秋の声なり京の寺 河村 有弘
『季のことば』
この夏の地球は温暖化どころか炎熱化していた。東京の最高気温を見ると、八月はもちろん、九月に入っても三十五度以上の日が続いた。月末になってようやくホッとする日に出会えるようになったが、炎熱化の解決案は世界のどこからも出てこない。来年はどうなる、の声が早くも出始めた。
日本大好きの外国人も、この夏は参ったようだ。東京で電車や地下鉄に乗れば、大きなスーツケースを引きずり、難行苦行の旅行者に出会うのは毎度のこと。山陰地方に別荘を構えた外国人夫妻は、余りの暑さに名古屋空港まで来て「もう国に帰ろうか」と話し合っていた(テレビ番組より)。
しかしようやく秋になったようだ。句の作者は、京都の寺院でふと耳にした外国語を「秋の声」と感じた。雰囲気からすれば、英語かフランス語か。中年の男女が庭や建物などを愛でながら、穏やかに会話を交わしていたのだろう。その声は周囲に溶け込み、自然の物音のように聞こえたのである。(恂)