柔らかきカマキリの子はやっと立ち      宇野木敦子

柔らかきカマキリの子はやっと立ち      宇野木敦子 『季のことば』  この句についてどう書くか、と考えているうちに気付いた。「蟷螂(カマキリ)生る」という夏の季語があったのだ。カマキリの雌は秋に、卵鞘を草や木の枝に産み付ける。そして冬から春が過ぎ、夏になると卵鞘から小さなカマキリがたくさん生まれ、それぞれが成虫への道を辿ることになる。  生れたてに違いないから、季は当然「夏」のはず。九月の末にもなって、この欄に出すのは時期遅れの感が否めない。とは言え先日出席した別の句会では、夏の句をいくつか見かけたし、カマキリ自体が秋の季語なのだから・・・。当欄の掲載不適格というほどではない、と勝手な理屈をつけた。  句会では評判が良かった。「凄い数が生れてくるはず。その中の一匹をよく見ています」(賢一)、「カマキリの子に対する暖かい視線を感じた」(有弘)、「珍しい所を見つけたものだ」(而云)。生れたては半透明の白さだという。その一匹がやっと立ち上がったのだ。何となく秋立つ頃を思った。(恂)

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