まっさらな室外機吠ゆ秋の路地 塩田 命水
まっさらな室外機吠ゆ秋の路地 塩田 命水
『この一句』
今年の夏の凄さは、「筆舌に尽くし難い」というカビの生えた成句が息を吹き返す猛暑極暑であった。東京近辺は気象台始まって以来の早さで6月中に梅雨が明けてしまい、それ以後、立秋などという言葉を笑い飛ばす猛烈な残暑に見舞われ8月が過ぎた。9月10日を過ぎてようやく涼しくなったと思えば、今日17日敬老の日はまた真夏日。これに加えて8月には台風が次々に来襲、果ては北海道で大地震と、なんだか平成最後の年を悼むかのような天変地異である。
この句はそうした異常な夏を、エアコン室外機が「吠えている」様子で鮮やかに詠み止めた。四六時中回しっぱなしのエアコン。近ごろのエアコンがいくら丈夫に出来ているからと言って、さしもの連続運転で故障が続出したようだ。この家もそうなのだろう。残暑の候になって「まっさらの」室外機が吠え始めたというのだ。
秋の句にエアコン室外機の取り合わせは意表をつく。しかし、これこそが平成30年の夏と残暑を記憶に留めるモニュメントである。(水)