堰落ちる水はすずやか鰯雲 須藤 光迷
堰落ちる水はすずやか鰯雲 須藤 光迷
『合評会から』(番町喜楽会)
双歩 すずやかでいい句ですね。鰯雲とよく合っています。
木葉 「落ちる水」で目が下を向き、鰯雲で視線は上へ。「天」と「地」を詠んでいて気持ちがいい。
水馬 堰(下)から天空(上)への目線の移動が描写を大きくしているんですね。
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早い所ではもう稲刈りが始まっているが、間もなく本格的な刈り入れシーズンになる。それを目前に控えた田園風景を、水を落とし始めた堰音と鰯雲とで鮮やかに描き出した。豊作万々歳の感じが伝わって来る。
上下する視線を詠むことによって、読者の頭の中には自ずから、黃金の波の稲田が遥かに続く水平方向の広がりも浮かぶ。上手な詠み方だ。
稲刈りと言っても今では大きな機械が轟音を上げてあっと云う間に終わって仕舞うようになってはいるが、やはりこの時期の農村には豊葦原瑞穂国の雰囲気が漂っている。(水)