行く手には奥の細道水芭蕉      小泉 基靖

行く手には奥の細道水芭蕉      小泉 基靖 『この一句』  水芭蕉が咲いているのはもちろん尾瀬だけに限らない。北は関東北部から北海道、さらに千島列島までも、だという。この句が意識するのは、その中の「奥の細道」である。東京あたりでは見かけぬ水芭蕉だが、遥か北を望めば、つまり芭蕉が辿った道には咲き続いているのだろう、と詠んでいるのだ。  作者は今年、俳句入門を果たしてすぐに、奥の細道独歩行の目標を立てた。それも交通機関は一切利用せず、芭蕉と曽良の歩いた道を延々と行くのだという。マラソンを楽々と完走、トライアスロンに参加し、近々、四国巡礼を連続での完歩を目指すという“鉄人”である。その次が奥の細道、となるらしい。  私は句を最初に見た時、暗い森の道をぼんやりと思い描いていたのだが、作者名が判明したとたん、風景の中に芭蕉主従の姿と水芭蕉の白さが浮かび上がってきた。芭蕉は新暦の五月半ばに深川を出発、六月中は福島、宮城、岩手あたりを歩いていた。時々、水芭蕉を見掛けていたはずである。(恂)

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