河童忌の山門に聞く読経かな     宇佐美 諭

河童忌の山門に聞く読経かな     宇佐美 諭 『合評会から』(三四郎句会) 豊生 私、築地(本願寺)によく行きますが、本当にこういう感じです。お盆の頃、河童忌でもあるし。山門の前にくると、読経の声が聞こえてきます。 尚弘 響きがいい。「山門に聞く」が生きていると思います。 而云 河童忌と読経。芥川の忌日とつかず離れず、という感じですね。 諭(作者) 母親を寺に連れて行ったことがあって、その時の記憶です。読経が聞こえていました。                *        *        *  前句に続いて芥川龍之介の忌日「河童忌」を詠んでいる。句のムードからすれば、こちらの方が忌日の句らしい。ある寺の門前に来たら、経を読む僧侶の声が聞こえてきた。あたかも龍之介の命日に近い頃。句会の兼題を思い出し、しばし読経に耳を傾けながら、どのように工夫を凝らすか、と考えたのだろう。  家に帰って一思案の後に気が変わった。あれこれ理屈はこねずに、そのまま詠んでみようか、と。前句に続いて、脱力、自然体といった様子が感じられよう。句作りにはそのような態度が必要のようである。(恂)

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