浴衣地の縫目辿れば祖母の顔 工藤 静舟
浴衣地の縫目辿れば祖母の顔 工藤 静舟
『合評会から』(酔吟会)
水馬 ものすごく上手い句だなあ、いいなあ。
春陽子 お下がりを貰ったりして、「お婆ちゃんは裁縫の上手い人だったんだなあ」と皆で思い出したりしてるんでしょうね。
涸魚 父は福島の分教場の教師、母は村の娘たちの裁縫の先生だった。そのころを思い出して懐かしさが湧いてきて、すぐに頂いた。
双歩 「祖母の顔」ときたのが上手い。浴衣姿を詠むのではなく、縫い目に注目している。
* * *
作者には俳句勉強会に出した「浴衣縫ふ針を滑らす祖母の髪」という句がある。これも素晴らしい。しかし、この句は祖母が縫い物をしているのだとすると語順が悪い。縫い物しているのは作者で、祖母の髪の入った針刺しで針を滑りやすくしているのか、どちらだろう。そんなことを考えていたら、上掲のように全く別の句に作り替えて投句してきた。「ばあちゃん子でした」と言う作者。どちらもバアチャンを想う気持が自然ににじみ出てている。(水)