河童忌は蓮の葉さして墓詣り     田村 豊生

河童忌は蓮の葉さして墓詣り     田村 豊生 『季の言葉』  柔道のOBが集まって始め、一か月おきの開催でそろそろ十年目の句会。兼題を決める立場で振り返ってみたら、忌日をまだ一度も詠んだことがなかった。歳時記を開けば芥川龍之介の忌日(河童忌、我鬼忌、龍之介忌)に近い。これで行こう、と決めたが、皆さんにはけっこう戸惑があったようだ。  芭蕉の忌日(時雨忌、芭蕉忌)なら十分に季節感があるが、芥川の場合はこの時期に亡くなった(自殺)だけのこと。それぞれに彼の俳句を調べたり、昔読んだ小説を読み返したりしたという。何故、命日が季語なのか、どうやって季節感を盛り込むのかなど、いくつかの質問も受けた。  掲句は蓮の葉を茎の下方で切り、日傘代わりにして墓参りという場面。芥川の代表作「河童」を更に戯画的に詠んでいる。東京ではちょうどお盆の頃、墓参もこんな風に、と洒落てみたのだ。河童の絵でいえば、小川芋銭よりも清水崑風か。俳句作り十年。これからも初体験に何度も出会うと思われる。(恂)

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