おもひでも併せて処分ころもがへ 金田 青水
おもひでも併せて処分ころもがへ 金田 青水
『合評会から』(日経俳句会)
十三妹 何気なく詠んだ句のようだけれど、私の心に刺さりました。思い出を処分するのも更衣なのですね。
てる夫 古いものを捨て去るのも更衣。更衣の一つの側面を詠んだのだと理解しております。
悌志郎 老齢の人が古い着物を処分しているのでしょう。衣服に思い出があり、心の痛みも併せて処分して新しいものに着替える。そういう物語を感じ取れます。
双歩 「思い出を一緒にしまふ衣替え」(阿猿)という句もあったが、私はこちらの「処分」の年齢に近い。
鷹洋 私は逆に「思い出を仕舞う」方を選びました。併せて処分は「処分」がちょっときつ過ぎるかな。
斗詩子 思い切って処分するのも更衣・・・。好きな服には思い出が絡みますね。
* * *
一枚の夏物を取り出して考える。新しく一枚を買ったので、着古したこのシャツは処分してしまおうか。改めて眺めると、さまざまな思い出が浮かんでくる。取っておこうか、捨てちゃうか。季節ごとに着替えながら、だんだん思い出を減らして行く。それでも思い出を処分し続ければ、人間はやがて本当の「裸虫」。(恂)