冷し酒つぶやきいつしか怒髪天 杉山 三薬
冷し酒つぶやきいつしか怒髪天 杉山 三薬
『この一句』
齢を取るといろいろな欠陥を生じるが、怒りっぽくなることもその一つ。これは明らかに脳味噌の劣化から来るものであろう。年寄りだろうが若者だろうが、怒りの感情はしょっちゅう湧き出す。むしろ多感な青年時代の方が怒ることが多いだろう。しかし、脳味噌の回転が速いと、ここで爆発するとまずいことになるという判断が咄嗟に湧いて、ブレーキをかける。ところが、劣化した脳味噌では、怒りの感情が一気に噴出してしまうのだ。それが治まると、今度は急速に反省の念が湧き上がり、そういう恥ずかしい行為に出た自分をしきりに苛む。
これを何十回、何百回か繰り返しているうちに、脳味噌の劣化はますます進行し、仕舞には怒る気力も失せて、静かになる。そうして、始終にこにこして、全て世は事も無しといった風情、いわゆる好好爺である。
どうも私は現在この途上にあるようだ。「水牛のつぶやき」というブログで、最近の政界官界のひどすぎる状態について、怒りにまかせて書きまくった。それを見た作者が「まあまあ」となだめてくれた。しかし、そんな身内の楽屋話に止まらず、これはもっと広く世相風刺の一句とも受け取れる。(水)