すぐ伸びる脇芽掻きてもトマトの香     嵐田 双歩

すぐ伸びる脇芽掻きてもトマトの香     嵐田 双歩 『おかめはちもく』  トマトの脇芽は掻き取らなければならない。放ったままにしておくと、どんどん芽が大きくなって枝に成長し、栄養分を奪い取ってしまうのだ。つまり脇芽を掻き取っておかないと、肝心の実が立派に育たない。そこでトマトを栽培している人は、脇芽が伸びてきたらすかさず取り除くのだという。  その憎っくき脇芽を掻き取ったら、トマト特有の香りが漂ってきたというのだ。句を読んで初めて香りのことを知った。悪者と思えた脇芽もトマトの一部であったのだ。掻き取られた個所から発する香りは、本体から引き離されていく脇芽の無念の思いなのかも知れない。これは“発見”ではないだろうか。  ただし句の上五には疑問を持ってしまった。「すぐ伸びる」がこの句に必要かどうか。ここを埋めるために、取ってつけたような感じである。別の語を考えてみたが、難しい。「見逃さず」「たはむれに」「朝仕事」。みんな面白くない。「いたいけな」は脇芽への思い入れを感じるが、まずまずか。(恂) 添削例   いたいけな脇芽掻きてもトマトの香

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