来ぬ人や不忍口に夏至の雨     廣田 可升

来ぬ人や不忍口に夏至の雨     廣田 可升 木葉 夏至は太陽が真上にあって、ぎらぎらと照り付ける印象が強いが、この句はあえて「雨」を持ってきた。「夏至の雨」がいいと思いました。 双歩 そうですね。「夏至の雨」として、「不忍口」を持ってきた。なるほど、と思います。 百子 私は、「不忍口」と「来ぬ人」でいただきました。なにやら物語があります。夏至なのに、雨が降っている。待ち人は来ない、女性が男性を待っているのでしょうか。 的中 夏至の雨がしとしと降っている憂鬱な午後に、美術館か博物館にでも行くのか、はたまた密会か? 不忍口で、来ぬ人を待つ様子が「夏至の雨」と呼応しています。 誰か 上野の「不忍口」辺りは繁華街、ホテル街も近いですからねぇ。隠微な感じもしますねぇ(一同笑)            *         *         *  不忍池畔「扇塚」に佐藤春夫の詩。「ああ佳き人かおも影を志のばざらめや不忍の・・・」。「不忍」は近くの「忍ケ丘」の地名によるとも言う。「忍」「不忍」「偲ばざらめや」。句に秘められた物語を誰か思わざる。(恂)

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