更衣こんな色のもあったかと     片野 涸魚

更衣こんな色のもあったかと     片野 涸魚 『この一句』  着ないまましまい込んでいた。ああそういえばいつだったか、この服を買ったなあ、それにしてもこんな色だったかなあ・・、よくもこんな派手なのを買ったもんだなあ・・。更衣風景の一コマを軽妙に詠んでいて、とても楽しい句だ。  更衣を「思い切って捨てる日」にしていると言う奥さん方が多い。気に入ったからこそ買った服だから、なかなか捨てられないのが人情。その結果、タンスのこやしが年々増えていく。どこかで踏ん切りをつけねばならない。それが五月ゴールデンウイークから六月一日にかけての「更衣」の時期ということになる。仕舞って置くならクリーニングに出さねばならない。だけどクリーニング代もバカにならない。着もしないでただ仕舞って置くのなら、もうこの辺で処分してもと、決断のきっかけになる。  問題はご亭主の洋服である。時折、これこれこういった柄のシャツがあったよな、なんて言い出すから危ない。実はもうこれは着ないだろうと去年捨ててしまったのだ。だから、更衣の前日は嫌がる亭主を座らせて「これ要る?捨てる?」と聞く。すると、「取っておく」などと意外にもケチな本性を現すのだ。(水)

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