事故現場供花夏日に晒されて     岡田 鷹洋

事故現場供花夏日に晒されて     岡田 鷹洋 『おかめはちもく』  近ごろは「供花」を「きょうか」とストレートに音読する事が多い。この句もそうである。そう読んでも間違いではないが、「供花」は「供華」とも書いて「くげ」と読むのが正しいようだ。まあ言葉というものは時代と共に変わり、漢字の読み方が変わるのもままあることで、それをとやかくは言うまい。  しかし、この句の場合は昔ながらの「くげ」と読むようにした方が万事都合良くなるように思う。まず第一にこの句は「じこげんば・きょうか・なつびに・さらされて」とぼつぼつ切れて、詩的感興が削がれてしまっている。これを「くげ」と詠んでみるとどうなるか。だが「くげ」では字足らずだ。字余りは許されることもあるが、俳句で「字足らず」はお粗末の極みだから、何とかしなければいけない。そこで助詞の「は」を入れることにしよう。  (添削例) 事故現場供花(くげ)は夏日に晒されて  烈日に晒され見るみる萎れてしまう供花に視線が据えられ、印象鮮明になる。もちろんリズムも良くなる。俳句では普段あまり使われない「は」という助詞だが、主体を際立たせる働きを持っている。(水)

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