地球にはあるのだ火の滝水の滝 中嶋 阿猿
地球にはあるのだ火の滝水の滝 中嶋 阿猿
『季のことば』
「滝」は場所によっては冬場「凍滝」(冬の季語)になって休眠してしまうものもあるが、まずは一般的には夏のものとさている。
さて、この句の滝はどう捉えればいいのだろうか。「火の滝」というのは、最近しきりに大規模噴火を繰り返しているハワイのキラウエア火山やグアテマラの火山が噴き出している溶岩流を指しているのだろう。夜間に撮影した映像はまさに「火の滝」であり、神話に出て来るヤマタノオロチもかくやである。そこに「水の滝」という下五が添えられている。水の滝という言い方がまことに奇妙で、恐らく前の「火の滝」と対比させるために、また字数の関係から、こうした耳慣れない言葉になったのだろうが、奇妙に似合っている。それに「あるのだ」という断定口調が愉快に響く。
宇宙全体は言わずもがな、太陽系の中でもちっぽけな地球という星。その小さな星である地球でさえ、全容は解明されていない。そんなことにまで思いの広がる句である。そしてこの句の面白さは、従来の季語に対する観念を越えて、無季俳句に一歩踏み込んでいるようなところである。(水)