新緑の日々に色濃し友癒ゆる       大沢 反平

新緑の日々に色濃し友癒ゆる       大沢 反平 『この一句』    これはプラス思考の句である。若い人たちは「何で?」と首を捻るかも知れないが、作者や私(筆者)のような“アラ80”世代には同意が得られると思う。この歳になると、親しい仲間がぽつぽつとあちらの世界に行ってしまう。頭の中に芽生えるものはどうしてもマイナス思考になりがちなのだ。  今年になって親しかった友人二人が相次いで亡くなり、人生とは何か、命とは何か、など心の深奥に潜むテーマに考えが及ぶことが多くなった。長らく碁敵だった「あいつ」とはもう一度、盤を挟んで戦いたかった、などと今も時々思っている。そんな時、この句に出会い、心からほっとしたものである。  初夏の燃え上がるような「新緑」に「友癒ゆる」という明るい材料が配されている。年を取れば亡くなる知人、友人が増えていくのは当然だが、指折り数えてみたら、病気から癒えて元気になる人の方がずっと多かった。よし、プラス思考で行こう。こんな風に急に気が変わるのも、俳句の効用の一つ。(恂)

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