新緑や吊り橋からの大ジャンプ 加藤 明夫
新緑や吊り橋からの大ジャンプ 加藤 明夫
『この一句』
新緑を詠むための舞台に、バンジージャンプを持ってきたのか、という驚きがあった。私はまず飛び込む人のことを思った。吊り橋から横に台座が張り出しているのだろう。下を覗けば、何十メートも下に谷川が一本の帯のように見える。よくもまぁ、そんなところから飛び込むものである。
ジャンパーは新緑に覆われた谷間に落下していく。彼(彼女)は周囲の緑が目に入るのだろうか。最初は通常の落下速度のはずだ。間もなくゴムが伸び、ブレーキがかかるが、伸び切れば上に跳ね上がり、また落下していく。この間の数秒は恐怖か、快感か。おそらく新緑は目に映らないだろう。
私はいくらか高所恐怖症気味で、スカイツリーの展望台から下界を見下ろした時は、下腹部に奇妙な感覚が走り、腰が引けた記憶がある。新緑にバンジージャンプの句はすでにあるのかも知れないが、この句は実に新鮮だった。私はそのうち、スカイダイビングを詠んでみようか、などと考えている。(恂)