結納の家包みたる夕河鹿 岡本 崇
結納の家包みたる夕河鹿 岡本 崇
『合評会から』(三四郎句会)
賢一 結納と河鹿(かじか)ねぇ。結びつきそうもない二つのものをくっつけちゃったところが凄い。
有弘 そうですね。結納と河鹿で、十七音の中にドラマの一場面を作り上げた。
而云 河鹿の声が聞こえてくる家で、結婚の前の儀式ですね。山村の川べりの一軒でしょう。近くの渓流から河鹿の鳴き声。両家の家族や親族がそろっている。こういう句は珍しいと思う。
尚弘 河鹿には、いろんな状況がありそうだ。例えば葬式だったら?
誰か 個人的には、おめでたい方がいいなぁ。
* * *
河鹿(かじか)は山中の清流にいる小型の蛙。美しい鳴き声で知られ、歳時記では「ヒョロヒョロ、ヒヒヒ」などと表現され、「山の鹿」(の声)に対する「河の鹿」とされる。何十年か前、私は高さ数十辰猟澆蟠兇両紊ら河鹿の声を聞いた記憶がある。それからすれば、河原近くの住居であれば、あの賑やかな、軽やかな声が十分に届くはずだ。夏の夕べ。結納の家は蚊遣火を焚き、窓は開け放たれていたのだろう。(恂)