夏めいて老母気になる痩せ具合     深瀬 久敬

夏めいて老母気になる痩せ具合     深瀬 久敬       『おかめはちもく』  作者はこのように語っていた。「夏になって親が半袖を着ると、こんなに痩せていたかと驚きます」。一人がこう話した。「私も痩せてきたが・・・。ただこの句の“気になる”は不要でしょう」。その通りだと思う。「気になる」などと言わないで、その気持ちを表すのが、俳句的な表現と言えるだろう。  年を取った親の体調を気にしない子供はいない。病気ではなくても、元気がない、テレビばかり見ている、など心配のたねは尽きない。目で直接、確認すると余計、気がかりになるものだ。ところがそのことについて「心配だ」などと直接、言ってしまうと、句の味わいが失せてしまいがちだ。  親が痩せてきたとしよう。太り過ぎの場合はともかく、痩せた人がさらに痩せるとかなり気がかりになる。そのような場合、ただ見たままの状況を述べてみる手がある。例えば次のように詠んだらどうか。「夏めいて老母の痩せのまた少し」。親を思いやる子供の気持ちが、滲み出てくると思う。(恂)

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