陽炎や歩けば遠き隣駅     大下 綾子

陽炎や歩けば遠き隣駅     大下 綾子 『合評会から』(日経俳句会) 実千代 (近そうに見えたのに)歩けば遠かったという情景がよく分かる。 水馬 歩いてしまった後悔の念が出ていて俳味がありますね。 而云 「すごく遠かった」と誰かが言ってたのを思い出した。 鷹洋 「やっぱり遠いや」と足の衰えを嘆いているのがよく出ている。 双歩 春じゃないと歩こうとは思わない。春らしい風景。 二堂 ゴルフの経験から言えば、陽炎が立つと逆に遠くに見える。 明男 私にも同じ経験があります。陽炎の中に見える隣駅まで歩こうと決心して歩いたら意外と遠かった。 青水 一駅歩きが近ごろの流行りだそうですね。季語が動かない。           *       *       *  合評会を聞いていたら、みんな同じようなことを経験しているんだなと、面白かった。都電荒川線、江ノ電はじめ私鉄各線には隣駅の見える所がよくある。季節が良くなると、ついふらふらと。しかしこういう句が出来るのだから、それもまた良し。(水)

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