桜蕊降る降る里の母校跡 嵐田 双歩
桜蕊降る降る里の母校跡 嵐田 双歩
『この一句』
日本全国少子化の波に洗われ、各地で小学校が続々潰れている。入学児童が年々減って、クラス編成が出来ないのだ。それで近くの小学校同士が合併し、吸収された方は廃校となる。東京都内や首都圏だと、廃校になった校舎はコミュニティセンターになって集会場や催事場として利用され、再度賑わいを見せるのだが、過疎化が進んでしまった地方の町村ではそうした再利用の道も無い。中には校舎を解体する費用すら捻出できず、古びた建物が化け物屋敷のように残っているのも見る。
この句の母校はすっかり取り払われているようだ。学校の敷地は結構広い。運動場まであるから、優に三、四千屬らいはあるだろう。だだ広い母校跡は今や一面若草が生い茂っている。校門のあった場所にはわずかに残った石垣と、桜の大木が四、五本。恐らく今年も豪華に花咲いたのだろうが、もう見上げる子供たちの姿は無く、空しく散って、桜蕊をひっきりなしに降らせるばかりである。 「降る降る」のリフレインが効果的で、「降る里」と言った遊び心も面白い。(水)