花冷えに居座る屋台の目黒川     池内 的中

花冷えに居座る屋台の目黒川     池内 的中 『おかめはちもく』  最近、テレビで活躍する俳句の先生が増えて来たのは実に喜ばしいが、「中八はダメ」と口癖のように言う方がいて、ちょっと気になっている。中八、つまり十七音の真ん中が八音の句は確かにリズムに緩みが出がちだが、全てが「悪」とは言い難い。中には許されるものもある、くらいに考えたい。  とは言え「中八」のこの句、やはり「中七」に直してあげた方がよさそうだ。理由の第一は「屋台の」の「の」が、どう考えても不要であること。さらに、上五も中八もすべて最後の「目黒川」にかかってくる言い回しも重く感じられよう。俳句はともかく、すっきりと詠み上げたいものである。  近年、桜の名所として名を上げてきた東京の目黒川。川沿い四キロに八百本のソメイヨシノが連なるが、花冷えの日は花見客が肩をすぼめて行き過ぎていくばかり。句は客の寄らない屋台の様子を「居座る」と詠んで同情を呼ぶが、調子がイマイチ。「花冷えに屋台居座る目黒川」くらいでどうだろう。(恂)

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