瀞渡る風に遅れて花吹雪     玉田春陽子

瀞渡る風に遅れて花吹雪     玉田春陽子 『合評会から』 命水 「風に遅れて」という表現に魅かれました。実況中継を見ているようです。美しい情景ですね。 幻水 花吹雪の様子をよく観察していますねえ。感心します。 百子 状況がよく分かりませんが、雰囲気があるのでいただきました。瀞に風が吹いて、その後に花びらが瀞に舞ったのですよね。素晴らしい雰囲気の句だと思います。 而云 瀞(とろ)に風が渡っていく。最初の風に遅れて花吹雪が追いかけてくるのでしょう。 可升 風が吹いたと思ったら、花吹雪を運んで来た。瀞は長瀞か瀞八丁でしょうか。絵になる情景です。              *       *       *  「瀞(とろ)」は河川の流れの静かな場所で、多くは淵になっていて、その上を風が渡っていく。途中、桜が散っていれば、花びらも風に乗ってひらひらと後を追い出すのだが、空気の抵抗が多い分だけ、風よりも遅れてしまう・・・。散文ならこのような説明になるが、俳句は理屈などこねず、「風に遅れて」ですべて完了となる。人によって句の解釈に多少の違いが生じても、これまた俳句の味わいなのだろう。(恂)

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